妹尾美希「renovation² -道から始まるリノベーション住宅-」

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　現在、計画敷地にはもともとアパートであった建物を改装したHAGISOという複合文化施設が建っている。その外観や建物の形式は下町である谷中にとても馴染み、かつ下町の活性に強く働きかけているように感じた。そこで、谷中らしさを持つ住宅としてHAGISOの外観・形式の一部を引き継いだリノベーション住宅を計画し、住居の視点からも再度下町と関わり合えるような住宅の提案をする。

具体的には、HAGISOの外観,内観,構造部分の一部と、誰でも使えるギャラリーを残した計画を行っている。

　　　　・通る道：敷地の面するT字路を利用した外観計画　　・始まる,リノベーション：通り道と既存の機能を融合し、HAGOSOや萩壮として使われていた下町の記憶を残す木造住宅

敷地説明

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計画敷地は日暮里駅から徒歩5分ほどの、東京都台東区谷中3丁目に位置している。敷地内に建つHAGISOでは、もともとアパートだった萩壮を改装し最小複合文化施設としてカフェやギャラリーなどを運営している。計画敷地の近くには、休日には行列ができる飲食店や、谷中ぎんざといった商店街があり、休日は人で賑わっている。

家族構成

想定する家族構成は2世帯家族とし、祖母・母・父・子供2人(小学生女,大学生男)とした。母は高校で生物の先生をしており、植物が好き。祖母が独りになったことをきっかけに2世帯で住むことになり、大学生の兄は獣医学部生で、本を読むのが好き妹は人見知りで祖母とよく家にいる。父は会社勤めで、ギャラリーの運営等は祖母が行っている。

ダイアグラム

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配置計画

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△1階平面図/2階平面図

【2階】

2階部分は視線がよく通るように、既存部を含め全体的に開口が多く設けられている。子供部屋からベランダにも視線が通るようになっており、キッチンにある大きな開口からは、隣接した墓地へ開けた視界が広がる。ベランダからも墓地方向が見える。

子供スペースの大きな窓は敷地周りの道路に面しているため、水やりなどのついでに通行者とコミュニケーションをはかることができる。

住宅としての機能(リビング・キッチン・寝室など)をおおきく大雑把に区切り、機能ごとにドアなどで完全に仕切らないことで、住宅の機能が成立しつつ大きな1つの繋がった空間になっている。そうすることで、家族が1人とも顔を合わせない日がなくなるようになっており、家族のコミュニケーションが取りやすくなっている。

寝室とキッチンの空間をまたぐように、既存の開口部が残っていて、１つの開口から２つの空間に光が差し込む。

【1階】

1階は2階と異なり、部屋の機能ごとに壁を設け空間をしっかりと仕切るようにしている。また、既存のほかに新規の開口を設けないようにしている。こうすることで、1階を「より個人的な空間」として使用できる。

こもり部屋は、1人になりたいときや閉じこもりたくなったときに使用することを想定している。

浴室やトイレ,洗面を祖母の部屋の近くに配置することで、高齢者の体への負担を考慮している。

西棟の１階にあるギャラリーは、GL から高さ 3.5m までをガラス張りにすることで、既存の建物の内部断面もショーケースのように外からみることができる。(その他模型写真参照)

建物全体を通して柱や梁を残しているため、入口や洗面所には柱が突出しており、既存建築の面影が多く残る。

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△1階,2階模型写真

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△短手断面図/長手断面図

ギャラリーには、学生でも大人でも素人でも誰でも自分の作品をおいていくことができるため、近所の小学生の図工作品や、美大生の作品などあらゆる展示を誰でも展示・鑑賞できる。

既存建築で用いられていた柱と梁の内部構造を、室内にも外部にも連続して出現させており、寄りかかるのにちょうどよい高さや、ツル科の植物の支柱になっている。

2階のキッチン・リビング・こどものスペースは、ドアを設けていないので、床面の高さを３段階に調節して空間を隔てるようにした。

各部屋が段々になっているので、上の部屋から下の部屋の様子をのぞき見ることができる。

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△4方向から家を見る

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△その他模型写真

講評：対象敷地に既に建つHAGISOを再度リノベーションする計画。撤去、増築、移設、転用など様々な方法を用い多様な空間を生成している。既存の1/3程度を撤去し、新しいボリュームを挿入しながら大きな外部空間を確保し、その外部にHAGISOの既存の機能を参照して誰でも立ち入ることができるプログラムを住宅内部と切り離して設置し新たな公共性を獲得している。課題の与条件の前提を安易に受け入れない自律的思考により、課題自体がもつ課題を逆照射した作品とも言える。（須藤）

KENCHIKU SHUKAN EXHIBITION 2021